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 2009年の年頭に、たくさんの人々の現状分析、未来への予測を読んだ。
 ほとんどの意見は、妥当なもので、いろいろと 教えられるところがあった。

 元/西ドイツ首相、ヘルムート・シュミットは語る。

1)  世界経済・政治の重心は、あきらかに、アメリカから東アジア、太平洋地域に移りつつある。特に、中国、インドの重要性がまして、アメリカの重みが減少してきた。

2)  内政上で、不測の事態がおきなければ、中国は今後40-50年で、テクノロジー面では、最先端に到達すると思う。

3)  私(ヘルムート・シュミット)は、21世紀に世界的影響力をもつ大国の顔ぶれを「アメリカ、中国、ロシア」と予測してきた。
    EUは、すくなくとも、21世紀前半には、こうした世界的な大国の一角をしめることはない。

4)  デモクラシー、人権といった、いわゆる西側の価値観は、もっぱら西側諸国のもので、アジアでは通用してこなかった。日本は例外である。今後も、西側の価値感は、アジアでは大きな役割を果たさないだろう。中国には、四千年の文化があり、儒教や道教が受け継がれてきた。21世紀の世界で、異なる価値観が存在することは、事実として受け入れるべきだろう。

5)  日本の未来を考えるうえで、ドイツと比較したい。両国はともに、第二次大戦後の半世紀で、当初想像もできなかった経済的成功をおさめた。大きな相違点は、ドイツがEUの中に根づいているのに対して、日本は近隣諸国から孤立していることだ。政治家をはじめ、日本の指導者は、隣人と友好的な関係を打ちたてようとする努力が不足していたと思う。ドイツは、戦後、近隣諸国とのあいだで、ある程度友好的な関係を構築できた点で、日本より幸福である。

6)  中国と比較した場合の日本の経済的先進性は、20年もすれば意味がなくなるだろう。日本は自国の経済的優位にあまりに長く依拠してきたのではないか。その優位は消滅しつつある。

 これは、現在の日本に対する弔鐘のように響く。
 ヘルムート・シュミットの意見は、おそらくアメリカにも共通してみられる日本観だろうと考える。(数字は、反論のために私が便宜的につけたもの)。