899

 地方の小都市の駅前に立ってみよう。荒涼とした風景がひろがっている。
 商店街は軒なみ昼間からシャッターを閉めて、まるで活気がない。まるで死んだような土地が多い。生活必需品はコンビニで買うにしても、その土地名産の和菓子などの店も元気がない。「美しい日本」などどこにもないし、「安全実現」もない。
 数年前までは、たとえば古本屋の一つふたつ、ほそぼそながら商売をしていたものだ。しかし、いまでは小都市にかぎらず、大都市の古本屋までが、量販専門の大型ブックショップに駆逐されてしまった。

 大多数の日本人は、古典はおろか、明治、大正、昭和前期の文学さえ読むことがなくなっている。直接には国語力のいちじるしい低下によるが、そうした教育を推進してきた教育の責任も大きい。
 むろん、文学作品などは読まなくても生きていける。
 日本赤軍のリーダーだった永田某という女性は、古典にかぎらず、およそ文学作品などは読まなかったという。あれほど陰惨な「総括」を行ったこの女性が、文学作品などは読まなくてもいいと思っていたことは間違いないが、革命家として、先天的に何かが欠落していたはずである。
 秋葉原で無差別殺人を起こした加藤某は、どんな文学作品を読んだのか。幼い少女をつぎつぎに殺した宮崎某は何を読んだのか。ぜひ知っておきたい。

 こういう荒廃は直接には誰に責任があるのか。

 免疫学者の多田 富雄先生は、その原因の一つに、経済効率を優先して、地方文化を無視した行政改革で強行された、無秩序な市町村合併をあげている。

    古い伝統ある地名が、惜しげもなく捨てられ、ききなれない珍奇な名前に変わった。地方文化は破壊され、愛郷心は失われ、住民のアイデンティティーはなくなった。それは故郷を奪い、国を愛する心を失わせる行為であった。

 その無秩序な市町村合併を推進したのは、小泉内閣だった。そして、大型店舗の地方進出をバックアップしたのは、中曾根内閣だった。
 小泉 純一郎、中曾根 康弘の名を忘れないようにしよう。