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 マイケル・ジャクソンの「スリラー」は、全米アルバム・チャート、37週連続トップ。売り上げ枚数、1億枚。
 私も買ったひとり。

 映画「ボデイガード」のサウンドトラックが、4200万枚。
 これも買ったっけ。

 イーグルスの「ホテル・カリフォーニア」や、ピンク・フロイドの「ザ・ダークサイド・オヴ・ザムーン」ももっている。

 映画「サタデイ・ナイト・フィーバー」のサウンドトラックも。

 売れ行きベスト5まで。
 私は、エボナイト、LP、テープ、CDと、無数の音楽を聞きつづけてきた。私から音楽をとったら、あとに何も残らない――ほどではないにせよ、たいして残らない。

 私の処女作は、「ショパン論」だった。クラシックを聞いていたのだが、途中でジャズに移って、やがてロックというふうに変わった。ついにはアジア・ポップス、エスニックと、われながら無節操につぎつぎと変わってきた。小人は虎変する。
 おのれの軽佻浮薄をさらけ出すようだが、それぞれの時代のヒット・チャートに浮かんだ曲の半分はおそらく聞いている。つまり、その程度に熱心な、そしてなんとも軽薄なファンだった。

 あるジャンルに気をとられると、ひたすらのめり込む。それはかなり長く続くのだが、どういうものか、ある日、突然に離れる。そのときから、そのジャンルのものをまったく聞かなくなる。MTVも見なくなるのだった。

 クラシックも、オペラまで。好きな音楽と、そのときそのときに飲んでいた酒の好みがなぜかパラレルにならんでいるような気がする。

 ひょっとして――もうひとつの好みも。(笑)