866

私の好きな歌として、中国、晩唐の詩、「半睡」を引用したいのだが、私のPCには字がない。
 野口 一雄先生の読みを紹介する。

   眉山 暗く淡く 残燈に向かう
   一半の うんかん 枕稜に 墜つ
   四體 人に着(つ)きて 嬌として泣かんと欲す
   自家は 揉損す がりょうりょう

 以下は、私の訳。

   燭台の残んの火影に ウエヌスの丘も暗くほのかに見え
   頭がずれて ゆたかな髪の半分が枕からあふれ落ち
   四肢を相手にまきつけて よよとばかりに浪声をあげようとする
   その手は思わず 衾のあやぎぬを もみしだきながら

 場面は残燈一戔、おそらくはクレアシォンということになる。眉山は、山なす蛾眉ととるべきだが、あえてモンスとした。「うんかん」は、雲鬢(うんびん)をまるくまとめたヘア・スタイル。「がりょうりょう」の繚綾は、ヴェトナム産の絹という。「が」は字がないのだが、絹の輝き。今のタイ・シルクに似ているかも知れない。

   ひとすじにあやなく君が指おちて みだれなむとす 夜の黒髪

 与謝野 晶子の一首を思い出す。