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 ウイーンの女優だったリリー・パーマーと「わりなき仲」になったとき、レックス・ハリソンは、コレット・トーマスという上流の女性と結婚していた。
「女に惹かれるとイギリスの男はやたらに自意識的になるものだけれど、レックスもそうだったわ」とリリーはいう。

 レックスはコレット・トーマスに離婚されてしまった。1945年、レックスと、リリーは結婚した。戦争が終わって、「戦後」の平和がやってきた時代。
 コレット・トーマスとの離婚では、レックス・ハリソンも、リリー・パーマーも、離婚訴訟に巻き込まれたあげく、やっと離婚が認められた。
 ふたりは、ハリウッドに向かった。しかし、「戦後」のハリウッドはレックス・ハリソンに、まったく将来性を見なかった。
 「カリフォーニアの気候は単調、刺激がなくて、崩れそうな豪勢さ、仕事の話は最低だった」とレックスはいう。ここで別のトラブルに巻き込まれる。
 リリーは彼を残して、ニューヨークに移った。

 レックスは、ハリウッドでキャロル・ランディスという女優と親密になる。だが、この女優は自殺した。当然、警察の調べをうける。レックスは精神分析医にかかる。キャロルの自殺の理由にとり憑かれて鬱に陥ったが、最終的な結論としては、キャロルは死の衝迫にとり憑かれていた、ということになった。

 レックスはハリウッドを去って、リリー・パーマーと舞台に専念する。
 やがて、マクスウェル・アンダースンの『一千日のアン』で「ヘンリー八世」を演じる。これは、当代の名演だった。しばらくして、リリーと共演するが、この舞台が、ジョン・ヴァン・ドルーテンの『ベル、本、蝋燭』であった。
 この頃から、ふたりは、ラント夫妻(アルフレッド・ラント/リン・フォンテン)いらいの名コンビといわれるようになった。
 イタリアのリヴイラ、ポルトフィノに豪華な別荘をかまえた。
    (つづく)