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この3月、アーサー・C・クラークが亡くなった。
 福島 正実が訳したので、はじめてこの作家を知ったことを思い出す。福島 正実のおかげで、当時、私はアルフレッド・ベスター、フイリップ・K・ディックなどを訳したのだった。

 アーサー・C・クラークとは何も関係がないのだが・・・その二、三日後に、アンドロメダ銀河の、「アンドロメダの涙」についての研究が発表された。

 アンドロメダ銀河から、巨大な星の群れがまるで川のように流れている。
 「アンドロメダの涙」というそうな。
 これが、8億年前に、アンドロメダ銀河と衝突した別の小さな銀河の残骸がひろがったものという。

 専修大の森 正夫准教授らが、筑波大のスーパーコンピューターを使った模擬実験であきらかにされた。

 銀河と銀河の衝突なんて想像もできない現象だが、森先生の解析では、アンドロメダ銀河の400分の一という小さな銀河が、アンドロメダ銀河の中心に向かって北側から衝突すると、遠くまで飛ばされた星の集団が、「アンドロメダの涙」をかたち作ったという。(「読売」’08.3/25.夕刊)

 私はこうした宇宙の現象について、まったく理解する頭脳がない。しかし、このニューズに知的な昂奮をおぼえた。宇宙には無数に銀河系が存在するとして、その小さな一銀河系に、さらに小さな銀河が衝突する。これだけでも、一つの宇宙は崩壊する。しかも、その残骸が涙のように流れて、一銀河系の引力圏にあふれている。
 涙というのは、うまい「命名」だなあ。
 8億年前か。宇宙にとっては、ほんの一瞬前のことだろうなあ。

 亡くなったアーサー・C・クラークは、「アンドロメダの涙」について何か書いているだろうか。