六代目(菊五郎)が語ったという。
若い役者を育てるのは、植木をそだてるのとおなじ。
いい種子をいい土壌に播いて、細心の注意を払って育てあげれば、各自もちまえの花だけは咲かせることができる。
ある日、五木 寛之が訊いた。
「中田さんは、若い作家を育てたことがおありですか」
「作家を育てたといえるかどうか。ほんの二、三人ですね。翻訳家なら、いくらか育てたといえるかも知れません。六、七十人はいると思いますが」
五木 寛之は眼をまるくした。
「私が見つけた作家は、ひとりぐらいです」
「ほう、誰ですか」
その名前を聞いたとき、こんどは私が眼をまるくした(と思う)。しんじられない作家の名を聞いたのだから。
ここには書かないが。(笑)