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 おでんがおいしい季節。

 ありきたりの具ばかりだが、好きなものをあげてみよう。ダイコン、サトイモ、こんにゃく、つみれ、昆布。そのかわり、ハンペンや、豆腐、キャベツ巻き、アブラゲに詰めものをするタカラ包みなどは、あとまわし。

 おでんは、もともと田植えの神事、田舞にはじまったという。田楽豆腐を、でんがくといったのは、田舞を舞う法師の衣裳に似ているから。
 昔の川柳に、

   田楽は 田で楽しむの 読みがあり

 という句がある。
 読んだだけでは意味がとれない。

 してみると、ここで「おでん」を酒菜に、木の升できゅっと一杯ひっかけてくり出す。行き先は、たんぼを越えてすぐ先の吉原。

 いい時代だったんだろうなあ。うっかりこんなことを書くと、たちまち柳眉をさかだてて噛みつかれそうだが、

   降ってきた なんぞどこぞにこぞろうか

 という川柳もある。

 これは、雨が降ってきたシーンというより、おそらくは雪の景色。行き先は、やはり吉原。
 あとの「こぞる」は、その場に居あわせた連中が、おなじ行動をとること。
 「こぞる」だけをとって見れば、いまの私たちの行動様式だってあまり変わらない。