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 ある日、大学の研究室で、親友の小川 茂久に、
 「おまえは、オッチョコチョイだなあ」
 といわれた。私は素直にうなづいて、
 「うん、おれはオッチョコチョイなんだ」

 オッチョコチョイ。最近、聞かなくなった。これも死語だろう。
 語源辞典で調べれば出ているかも知れない。調べる気もなかった。

 明治四年、こんな歌がはやったという。

   諸所にトンネル切り開き
   山も 野山も 平地で 馬車や 人力車や 岡蒸気
   オヤ オッチョコチョイのチョイ
   オッチョコチョイのチョイ

 へぇー、明治時代にできたのか。
 してみれば、私のオッチョコチョイぶりは、土地開発や、新しい交通手段に眼をまわした文明開化に少しはかかわりがあるかも知れないナ。などと考えるのが、私のオッチョコチョイなところ。(笑)

   死んだあとでの 極楽よりも
   この世で らくらく暮らしたい
   アラ ほんと現代的だわネ

 これは大正四年。物価の高騰に、世界大戦、成金熱、プロレタリアの労働争議、それで起こった米騒動。

 いつの時代も「現代的」だから、不安材料がいっぱい。私もどうやらパイノパイノパイ。