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 秋雨。
 私は蕭条たる秋の雨が好きである。
 中国語を教えてくれた若い女性がロンドンにいる。ヴォルテールが「悪しき風」と呼んだロンドンの東風はどうであろうか。

 ヨーロッパも今年は異常気象に襲われたという。さなきだに、ミストラルや、フェーン、シロッコといった風は、そこに住む人々に、苦しみや悲しみをあたえると聞く。

 「私は大荒れの三日前から、息ぐるしくなり、乾燥は私の血脈を灼き、雪が降れば、すっかり弱ってしまいます。太陽が地平に消えるとき、なんともいえない不快なものがこみあげます。秋になると、木の葉のように生気がなくなり、三月、最初の日ざしが灰色の雲のドームをつらぬくと、私の血は血管のなかで植物の汁液のようにたぎりたちます。」

 セヴリーヌ夫人が書いている。

 いま、関東地方に雨が降っている。セヴリーヌ夫人なら寝込んでしまうかもしれない。