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 昔、宋の時代のおじいさんの話。名は、陳 脩。73歳。

 「解嘲」の詩を詠んだ。

   読尽詩書五六担  読みつくす 詩書 五六たん
   老来方得一青衫  老来 はじめて得たり 一青衫(せいさん)
   佳人問我年多少  佳人 我が年の多少を 問わば
   五十年前二十三  五十年前 二十三

 私は、『詩経』、『書経』はもとより、ありとあらゆる思想、哲学書から稗史小説まで、車に五つも六つも積まれたほども読んできた。
 ヨボヨボのおじいさんになってから、科挙の試験に受かって、やっとお役人になれた。 美人に、ねえ、お年はいくつときかれたら、ああ、五十年前は、二十三だったよ。

 「解嘲」の詩は、他人のあざけりに対して、弁解するもの。
 可哀そうな陳脩先生。いまの私そっくり。いや、私はもっと老いぼれている。

 このおじいさんをあわれにおぼしめした天子は、後宮のなかからひとりの美女を選んで妻として賜った。彼女の名は、施氏、三十歳。

 チェッ、うまくやりやがったなあ。