私は、小島 なおのファンである。
東京生まれ、20歳の歌人。
暗闇に椅子置かれあり一脚の椅子であるという自意識もちて
英単語書き並べいる青ペンの滲んだところノートに夏が
地底にも夏はきにけり雨粒の滲みて溢れている音がする
「星の王子さま」読み終えてうわばみがわたしのうちに棲みはじめたり
踏み切りのここでお別れ真夏には断片的な思い出ばかり
たいていの子どもが、ある時期、ノートに詩のようなものを書きつける。やがてそういう時期があったことも忘れてしまう。以前と変わらないが、たいていの女の子は、ただ綺麗なだけで、頭のカラッポなオンナになって行く。
小島 なおは、そうはならずにこのまますぐれた歌人になってゆくだろう。
ただ、目下の彼女にないものは、幻想、残酷さ、ヒューマーなどである。資質的に、そうした要素をもたないのかも知れない。もし、そうだとすると、彼女は、もうひとりの『サラダ記念日』の歌人として知られるだけのことになる。
私としては、彼女が挫折することなく、その感性と才能が、じゅうぶんにのびてゆくことを願わずにいられない。