私の「文学講座」にきている女の子から、おもいがけない知らせをもらった。
声帯をいためて、医者に「仕事以外ではなるべく声を出さないように」といわれたという。心配した。
さいわい、もう病院通いをしなくてもすむらしい。
女の子といっても、剣道三段。しかも、熱烈なシャーロッキアン。マンガ、アニメを語らせれば他の追随をゆるさない。
この夏、きっと甲子園か世界陸上、声をからして声援したか、「アリオン」、「オリジン」から「デスノート」(完全決着版)まで徹夜で読みふけったせいだろう。
せっかくの美声が聞けないのは残念。
すぐにお見舞いを出した。赤塚 不二夫の「ウナギイヌ」が半欠けの月を見ている絵ハガキ。
名月や とはいふものの 籠見かな
じつは、一茶の句のパクリ。原作は、稲見かな。
この句では「や」と「かな」を重ねている。切れ字の重なりは、俳句でもっとも忌むべきものとされている。一茶が知らないはずはない。それを承知の上で、一茶は使っていると見てよい。このあたりに、一茶の傲岸を見る人もいるだろう。
私はむしろ、一茶が世の常識を踏みやぶって、ささやかな反骨ぶりを見る。
ゆかりさん、はやくよくなってください。