そういえば、其 角に、
十五から 酒を呑み出て けふの月
という句がある。
『北窓瑣談』の著者は、
十五に春情きざせるをいひ取り、酒に全盛を尽し、けふの月五文字に零落の姿をうつす。絶妙の作といふべしと評する。
其 角はこの批評をどう読んだのか。
朝ごみや 月雪うすき 酒の味
チェッ、にくいね、このひと。
いまの感覚では「朝ごみ」といっても、朝のうちに分別ゴミを回収に出すぐらいしか想像できないだろう。
むろん、こういう酒の味は私の世代では経験がない。
いい時代だったんだろうなあ。其 角さんがうらやましい。
私は其 角のようなえらい詩人ではないし、酒に全盛を尽すような風流を知らない。まして、「朝ごみ」の酒の味にも無縁だった。しかし、けふの月に零落の姿をうつしていることはおなじだろう。
これもあわれ、というべきか。