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 私の俳句。
 街を歩いていると、ふと俳句のようなものがうかんでくる。

 夏の句。旧作。

    蔦からむ廃屋の昼 犬吠える

 俳句とはいえないね。廃屋なのだから誰も住んでいない。だから、このイヌは飼い犬ではない。真昼に、軒のかたぶいたような家のそばを通り抜けようとしたら、イヌに吠えられた。

    ザクロ割れて 蟻の歩みに日の昏(く)れる

 これまた、俳句とはいえないようなしろもの。
 夕方、散歩の帰り、ご近所のザクロの割れているのを見た。それだけのこと。

    日の暮れに 天つ空なるひと在りや

 これは「恋」の句のつもり。

    まくなぎを払いつ 白昼(まひる)ヌード描く

 私の小さな仕事部屋の壁に、女子美の生徒が描いてくれた自分のヌード(50号)のキャンバス。書棚の横に、トム・ワッセルマンのヌードの絵ハガキを小さなフレームに入れて飾ってある。ある女性が暑中見舞いにくれたもの。
 ある時期、油絵やアクリルで描いていた。そのまま戸棚に放り込んでおいたところ、おびただしい亀裂ができたり、カビがひろがっていた。みんな焼き捨ててしまった。
 最近は、水彩しか使わない。