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 「サイコ」という概念が一般に知られるようになったのは、ヒッチコックの映画からだった。その後、精神病質に関して研究が広範囲にひろがった。
 サイコパスという概念も、いまではひろくもちいられている。
 だが、厳密にいえば、サイコパシー(精神病質)、ソシオパシー(社会病質)、反社会性パーソナリティー障害(PPD)は、しばしば混同される。

 サイコパシーはパーソナリティー障害。サイコパスは、良心もなく、他人に対しての共感がない。何につけ罪悪感がない。そして、何か、たとえば、神、自然、自分の属する環境、組織、いっさいに対する忠誠心がない。
 最近の事件の報道を見ると、こうしたサイコパシックな「人間」による、非情な犯罪が多くなっているのではないか、と思える。

 真喜志 順子が訳した『社内の「知的確信犯」を探し出せ』(ポール・バビアク/ロバート・D・ヘア共著)を読んだ。(「ファーストプレス/07・7・25刊/2200円」
 真喜志 順子は『メンデ』、『囚われの少女ジェーン』などの訳で知られているが、この『社内の「知的確信犯」を探し出せ』のおもしろさは、全面的に訳のみごとさによる。
 私のように、精神病理学にまったく知識のないもの書きにとっても、とても刺激的な本だった。以下は、書評ではなく、私の勝手な読後感である。

 原題は SNAKES IN SUITS(スーツを着たヘビ)。私はすぐに、戦後すぐに登場した企業小説、『灰色の服を着た男』と、鬱質で、いくらかサイコパシックな性格をもった女性が精神病棟に入れられた女性を描いた『蛇の穴』を思い出した。
 そういう意味で、『社内の「知的確信犯」を探し出せ』は、企業内サイコパス+サイキック・ストーリーの複合と見ていい。
 まず、著者のひとり、ロバート・D・ヘアの調査(「精神病質チェックリスト」PCLーSV」)によるサイコパスの領域と特性のリストをあげてみよう。

 ■対人関係    ■感情 
  表面的     良心の呵責がない
  誇張的     共感能力がない
  欺瞞的     責任を回避する
   
 ■ライフスタイル ■反社会性 
  衝動的     行動のコントロールがニガテ
  無目的     青年期の反社会的行動
  無責任     成人後の反社会的行動

 著者は書いている。このリストの特性を見ていると、あらぬ不安を抱いたり、いやな余感が頭をかすめるかも知れない。

 「ひょっとして、オレもサイコパス?」