628

 私はまとまったかたちで詩を訳したことがない。
 ロラン・バルトの短詩を短歌形式でパロディしたり、ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ、ファリンゲッティを少し、マリリン・モンローの数編を訳した程度。
 詩を訳さない理由は簡単で、私の語感、才能、語学力では訳せないからである。

 たとえば、イギリスの春歌を読む。
 どれもおもしろいのだが、江戸時代の俳句、川柳ほども理解できない。

 思想家、バートランド・ラッセル卿の作とつたえられる春歌がある。

   上海そだちの姑娘(クーニャン)は
   人目を気にする はずかしがりや
   夜は 紙燭を消してから
   裙子をぬいで もぐりこむ
   天帝さまのご覧になるのが こわいので

 私の訳ではせいぜいこんな程度。