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認知症ケアの一つに、「ボケ予測テスト」というものがあるという。
 1)おなじ話を無意識にくり返す。
 2)知っている人の名前が思い出せない
 3)物のしまい場所を思い出せない
 4)漢字を忘れる
 5)今しようとしていることを忘れる
 6)器具の説明書を読むのが面倒くさい
 7)理由もないのに気がふさぐ
 8)身だしなみに無関心になる
 9)外出が億劫になる
10)物が見つからないと他人のせいにする

 これはおもしろい。さっそく、自分のボケ予測をテストしてみる。

 1)「おなじ話を無意識にくり返す」。たぶんその通り。ただし、自分では気がつかない。聞かされるほうはすぐに気がつく。そんなとき、私の周囲の心やさしい女性たちは、「また、おなじ話をくり返しているわ」と思っても、黙って聞き流してくれるだろう。 もっとも、私はときどき意識して、おなじ話をくり返す。
 「やれやれ、またおなじ話をくり返しているわ」と思っている相手に、「やれやれ、またおなじ話をくり返して話さなければわかってくれないのか」と、思いながら。

 2)「知っている人の名前が思い出せない」。
 私はこのところ「文学講座」めいたものをつづけているのだが、ひどいもので、自分ではよく知っている名前が出てこないことがある。
 『嵐が丘』に出ていた女優さん。えっと、誰だったっけ。オデコの女優さんで、綺麗なヒト。うーん、名前が……出てこない。ほら、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』の妖精とおなじ名前のコ。なんてったっけな」
 講義をおわってから、不意に、マール・オベロンを思い出した。こんなことがよくある。
 先日も、『富士に立つ影』のストーリーを説明しているうちに、「佐藤公太郎」の子どもの「城太郎」が父の仇「兵之助」を、湯島の境内で討ちはたすところで、「公太郎」だったか、「城太郎」だったか、いや「光之助」だったか、自分ではよく知っているはずの名前が思い出せなかった。
 私の講座にきてくれている人たちが教えてくれた。
 私のボケは、この程度に進行しているらしい。
     (つづく)