吉原、三浦屋の遊女、奥州は深く契った男がいたが、心ない人の中傷で、愛想づかしされて、彼のあいだも途切れかけた。かねて心を決めていたので、
恋死なば わが塚でなけ ほととぎす
の辞世を残して世を早めたという。
奥州は、「吉野さぞ 郭あたりの菜種さへ」の句がある。
吉原界隈でさえ菜の花が咲いている。遠い吉野の桜は、さぞみごとに咲いているだろう。遊女の悲しみまでも感じられる。
ほかの遊女の句もあげてみよう。
思ふこと 伏籠(ふせご)にかけて おぼろ月 野里
おしどりに 霞かかるや 夢心 なる
擂り箔の小袖に吹けや 春の風 花讃
難波女のふところ寒し 春の風 うめ
最後の句なんか、私のような貧乏作家も身につまされる。