ときどき想い出しては女流の俳句を読む。読むといってもせいぜい20~30句ばかりを読む程度だが。
嫁ぎける其夜や 寒き春の月
春月や 伽藍の蔭の ちさき宮
浮かれ歩く人の女房や 朧月
鏡中や わが黒髪に風光る
陽炎(かげろう)に 髪解きいるや 頭痛性
以上、五句、はぎ女。どういう女性なのか。私は、なぜかこのひとの句が気にいっている。ほかに「春雷や 道頓堀の旗の上」、「貝寄せや 問屋ばかりに古き町」などがあって、大阪の商家の女とわかる。加賀の千代を尊敬していたらしく、「千代の墓に赤き草花や 春の霜」という一句がある。このひとの優しい心根がうかがえよう。
日永魚 鼻を並べて泳ぎけり
おのが句の屑の多きや 暮れの春
自分の句にクズが多いと認めている、こういうしおらしさがいい。