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中学生がいじめを苦にして自殺する。そんなニューズに心が暗くなる。いじめで死を選ぶ子どもの内面には、ほんとうは恐怖がひそんでいる。それを大人にいえないから、追いつめられて、自殺まで考えるのだ。

小学生のころ、いじめられたことはない。仙台で中学に入ってから、いじめられるようになった。
いっぱしに生意気だったし、学校の成績もそこそこだったが友だちがいなかった。子どもにとっては、時分の住んでいる場所から通学する友だちがいるかどうかは大きな問題になる。

私と同じ地域に住んでいる生徒が一人いた。毎朝、私をさそってくれるので、いっしょに通学することになったが、これがかなりのワルだった。

私はこの生徒のことを思い出すと、今でも不快な気分になる。

私が、彼を避けるようになってから、毎日、学校の行き帰りが恐怖の連続だった。登校時間をズラしたり、帰りはわざわざべつの道を選ぶようになった。それでも、三度に一度はつかまってしまう。いっしょに帰りながら、彼はニヤニヤして、途中の店で私にお菓子や、子ども向きのゲームのようなものを買わせるのだった。
いつも私が自発的に買って、それを彼にくれてやる、という格好になるのだった。だから、脅迫ではなかった。しかし、下校の途中、待ち伏せしていた彼につかまると、蛇ににらまれた蛙だった。