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ある女性。30代。子どもがひとり。夫とのあいだは完全に冷えきっている。子どものためだけに結婚をつづけている。
今、40代の男性と関係がある。
しかし、最近、友人にうちあけたところ、「自己中心的で、自己陶酔しているだけ」といわれて、ひどく傷ついた。しかし、自分では、「彼」への思いはほんものだと思っている。
「大切な人と、純粋な気もちでつきあって行くことが、それほどまでに批判されることなのか。遊びや、いいかげんな気もちではなく、まじめで、ほんとうの恋だと思っているけれど、私は間違っているのでしょうか」

ある女流作家が答えていた。

あなたが彼を愛していることに偽りはないのでしょう。しかし、お友だちの言葉も、否定できません。
夫があなたと同じことをしたとき、あなたは許せるでしょうか。裏切りとは感じませんか。

そうなのだ。こういうケ-スで、夫を嫉妬しない女はまずいないだろう。いくら「夫とのあいだは完全に冷えきって」いても。
その女流作家はつづける。

「本気」であるなら、家族を傷つけ、周囲のひとを巻き込み非難されることも、お互い一身に負って、その「恋」を貫くのが、身勝手であっても「純粋」というものではないでしょうか。
また、夫との関係が「冷め切った」ものであるなら、彼の存在とは別に、結婚生活をつづけるかどうかを考える必要があると思いますが、いかがでしょうか。

私が回答しても、おなじようなことしかいえないだろう。
これは正論だが、この女性に、そういう「恋」を貫くほどの姿勢をもとめるのは無理だろうと思う。お互いの家族を傷つけ、周囲のひとを巻き込み、非難されることも辞さないというのはとてもできることではない。

ただ、離婚した場合、子どもが傷つかないとはいえない。誰よりも子どもが傷つく。

私がアドヴァイスすれば、一つ。このことについて、けっして口外しないこと。「人生案内」に投書するなどもってのほかである。世間的に、悪妻や浮気女と見られないこと。夫との関係が「冷め切った」ものなどと見られないように努力すべきである。

ほんとうに賢明で、善良な妻は、ひとりの男に出会って彼を愛したところで非難されない。夫との結婚生活はいずれ終わる。早く離婚したほうがいい。
もはや愛情のない夫とのうつろい行く日々のむなしさ、苦さをどゅうぶんに味わってきた。幻滅のさなかに「ほんとうの恋」に出会ったのは僥倖というべきだろう。つまり、彼女にはどこか大胆なところがある。

もう一つ、アドヴァイスしておこう。
ほんとうに大胆で、夫がおなじことをしても許せるほど賢明な妻は、相手の男性と別れることも覚悟したほうがいい。そのときにそなえて、自立できるように準備する必要がある。できるだけ早く、とくに「親しい」誰にも知られないように。

まかり間違っても、「冷えきった関係」を理由に、夫を殺害して、死体をバラバラにして、いろいろな場所に投げ捨てるなどという行為はしないこと。ああいう事件を起こす女は頭がよくない。