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鼓笛隊の少年を描いた名作がある。
少年の頃、ああ、これがジャンジャカジャなのか、と思った。まだ、映画の「戦争と平和」や「ナポレオン」も見ていなかったから、鼓笛隊の少年といっても、自分とおなじ年代の少年が軍装して、鼓笛を手に戦場に立ったことが想像できなかった。

幕末、尊皇攘夷で国論が分裂していたとき、幕府はフランス式調練をとりいれた。このとき、閲兵訓練や、号令に鼓笛が使われた。
これがジャンジャカジャである。
文久の頃にはやった俗謡に、

一夜どまりのジャンジャカジャに惚れて、ついて行かれず泣き別れ

という歌がある。この歌は、成島 柳北が記録している。

幕末、江戸の町娘たち、遊女たちの姿が見えてくる。