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東京から、千葉まで。
幕張あたりで、めずらしく和服の若い女が乗ってきた。せいぜい二十歳。なかなかの美形だった。小股の切れあがった娘だが、身のこなしが粋で、水商売の女なのか。この娘が私の横に身をかがめて何かしている。何を探しているのか。そのうちに私のとなりにぺたっとすわった。へえ、めずらしいこともあればあるものだと思った。
むろん、私に関心があってすわったのではない。何かを拾おうとして、こんどは私のとなりの男の横から身をかがめて何かしきりにさぐっている。その男は、娘の動きに驚いたのか、あわてて席を立ってドアに向かった。娘は、空いた席にすっと腰を下ろした。おやおや。
よく見ると、腕にからめた大粒の木のお数珠のようなものをまさぐっている。紐が切れて、その珠が何個かころがり落ちたらしい。それを拾おうとして、私のそばをうろうろしたらしい。
なんでぇ、つまらねぇ。
帰宅。