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俳句は短い詩型なので、誰でもかんたんに俳句を詠む。

今の世の理解にうとき頭巾かな     この女

江戸の俳句にこの一句を見つけて、少し驚いた。俳句に「理解」といったことばが使われている。
いろいろと苦労してきたけれど、いまは仏門に帰依しています。おかげで、世の中のことにはすっかりうとくなってしまったわ。これが、私の注釈。
「頭巾」は冬の季題で、ほかに、

持仏堂どの尼見ても頭巾かな     はぎ女
思ふやうに冠(かむ)れぬ風の頭巾かな   信子

といった例がある。「この」さんはどういう境遇の女性だったのか。ほかに、

河豚(ふぐ)提(さ)げて源太が女房通りけり

という句を見つけた。きっと庶民的なひとだったに違いない。
このフグの種類は何だったのか。それよりも、江戸の庶民が自分でフグをさばいていた(らしい)ことに驚いた。