カマトト。『広辞苑』(岩波)では、
かまとと[蒲魚] 蒲鉾(かまぼこ)を、「これは魚(とと)か」ときくことからいう。わかっているくせにわからないふりをすること。なにも知らないような顔をして上品ぶり、またおぼこらしくふるまうこと。また、その人。
『新潮国語辞典』(新潮社)では、
かまとと[蒲(魚)(蒲鉾(カマボコ)を、「これは魚(トト)か」と聞く意という)知っているくせに知らないふりをすること。おぼこらしくふるまうこと。また、その人。
ほとんどおなじ記述である。
幕末の上方方言で、かまとと、というのも、「おぼこらしくふるまうこと」を意味したが、ある通人にこの魚のことを伺ったところ、おいおい、そういうノをカマトトってンだヨ、といわれた。
昔の本に・・・「釜ととなる魚は、生きがよいので、一箸は頂けるが、深入りすると毒がある。よって通人は食わず。昔はこの魚(うを)、玄人のあいだに多かりしも、今は変りて、素人のあいだにあり」とある。
当然、年若い芸妓や舞子の品定めにかかわる、という。
釜というのは女性の性器。おととは魚だが、要するに、「おぼこらしく」ないもの。だから、こういうのは(最初の)一箸は頂けるが、深入りすると毒がある。
「なんだ、おまイ、そんなことも知らねぇのか」