歳末。
すすめられつつ、ついしわすれど、
こともおろかや、よいことはじめ、
陽気うわきの、ほうき客とて、
西や南をはいてまわるが 煤とり、
あとにゃ くたびれ、
ほんにもちつき、はやせつぶんや、
けがれ不浄の 厄をはらうて、
まめの数とりゃ、つい三百六十ついた、
ひいふうみいよ。
近松 門左衛門の作という。竹田 出雲が加筆したともいう。
それほどむずかしくはないが、裏にはエロティックな含意がある。「ついしわすれど」は、うっかり、大掃除をするのを忘れた、に師走がかけられている。
「ことはじめ」は、むろん、セックスのこと。ただし、昔は旧暦だったから、12月13日。歌舞伎や粋筋では、この日をあらたまの年として、顔見世がはじまる。
「ほうき客」は、お座敷を掃除する箒にかけて、女をつぎつぎにとりかえる客。
西は福原、西門筋。南は大阪の遊廓。関東者の私にはよくわからない。
そこで「もちつき」、「せつぶん」にもなにやら見えてくる。
厄払いは、大晦日に子どもが近隣の家々をまわって、おゼゼ、お豆をもらう。最近、東京の子どもたちがアメリカン・スタイルの仮装で、ハロウィンに近所をまわると知ったら、江戸の子どもたちは羨ましがるだろうか。
「まめ」、「つい三百六十ついた」も想像がつく。
禿(かむろ)、舞子の子どもたちから、ひろく江戸の子どもたちにはやった歌で、私の「コ-ジ-ト-ク」も、これでおしまい。
どちらさまも、よいお年を。