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横浜国立大/名誉教授の宮脇 昭という人のことを読んだ。
日本各地の土地を歩いて、その土地ほんらいの自然が残っている森、「鎮守の森」を拡大しようとしている。

日本では、もともとその土地に根づいた森がなくなってきている。
その土地ほんらいの森に見える里山の雑木林にしても・・・じつは、燃料や肥料に使うために、人間に都合のいいように変えられた二次植生だという。
ところが、住人が勝手に手をつけることのできない神社、鎮守の森などには、その土地ほんらいの自然が生きつづけている。

いまでは常識になっている宮脇先生の考えも、60年代半ばには、生態学者さえ半信半疑だった、という。

宮脇先生は、80年代に『日本植生誌』(全10巻)を出された。10年におよぶ労作である。その研究をつらぬいているのは・・・「鎮守の森」には、防音、集塵、空気の浄化、水質浄化、保水といった機能が集約されているという思いだった。

宮脇先生は、われわれの先祖のいとなみについて、

「(われわれの先祖は)ふるさとの木によるふるさとの森を残してきた。愚か者が破壊しないように、神社やお寺やお地蔵さんをまつって、この森を切ったらバチが当たるというふうにしてきた。この日本人の叡知を見直すべきだと私は思います。」

宮脇先生がこう語ったのは、1989年だった。

そして今、私たちは2007年をむかえようとしている。