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日本に、食料の輸入が途絶した場合・・・1食分は、普通の10分の一から5分の一の量、1食は約113キロカロリ-として、1人あたりのブタ肉が、約10グラム。
ご飯やジャガイモなども、ほんの二口か三口で食べてしまう、という。

こうした「現実」が、たとえシミュレ-ションにせよ、「仮想的」ではなく「蓋然性」のつよい「問題」として農林水産省が発表したことに注意すべきだろう。

私は警告しておきたい。こんなものは、あくまで数字の問題であって、実際の飢餓は、こうした数字ではけっして想像できないということ。
第二次大戦の末期から、敗戦後の飢餓を知っている人なら、「ご飯やジャガイモなども、ほんの二口か三口で食べてしまう」どころか、ほんの二口か三口で食べてしまうほどのコメの配給もとだえて、飢えに苦しんだことをおぼえている。
おコメのかわりに脱脂大豆が配給された。これは、大豆をしぼってアブラをとった残りで、ブタやニワトリの飼料になるものがアメリカの緊急援助で配給されたのだった。
主食のかわりに、ザラメ(砂糖)や澱粉だけが配給されたこともしょっちゅうだった。
こうなると、闇(ブラックマ-ケット)に頼らなければ生きて行けない。いちじるしいモラルの低下が起こり、人倫上、かならず道徳的な頽廃をともなう。

必然的な結果として、凶悪な犯罪が増加し、金融システムは崩壊し、通貨インフレ-ションによって、国家の政治・経済はみるみるうちに破綻にむかうだろう。
私がゾッとするのも当然だろう。

もう一つ、ゾッとすることがある。
シミュレ-ションというものは、すべてものごとを過度に単純化するものだということ。なにかのシミュレ-ションを眼の前にしたとき、自分のもっているイメ-ジを、極度に正確にまで押し進めてみよう。そうなると、そのイメ-ジに、自分の感性や、知識が、どういう性質のものなのか、よくわかる。