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現在、世界には57億に近い人間がいて、今世紀の終わりまでには毎年、平均9百万の率で増加している。国連の専門家たちの試算では、2050年には現在の倍ないし百億に達する、とか。
人口は、世界のある地域ではほかの地域よりも急増している。1990年から2050年の人口増加の97%は、こんにちの発展途上国にあらわれる。もっとも急増している大陸はアフリカで(3.2%)、ラテン・アメリカは(1.9%)。アジアは三番目で(1.8%)である。しかし、アジアの現在の人口はすでに、今世紀末までに、各大陸の総人口よりも多い。


人口の急増がもたらすもっとも緊迫した問題は、食糧不足である。毎年、多数の幼児に食糧が必要になるが、現在の人口は大きな比率で、十分、かつ適性な食物をとっていない。最近の数年間、食糧の総生産量は増大しているが、もとより一人当たりの食物の量はそれ以上にいちじるしく少なくなっている。
別の問題としては、急激な人口増加が、とくに発展途上国に見られることである。すでに述べたように、いまやこうした急速な人口の増加を見せている国に生きている人々のほぼ半数は十五才以下なのである。こうなると、成人は子どもたちの必要をみたすためにさらに苦しい労働をしなければならない。学校や教師も不足しているし、病院、医師、看護婦も十分ではない。農業用地(耕地)は少なくなり、その結果、田舎の人たちはよりよい生活条件を探そうとして都会に移動する。しかし、都会は住居が払底(ふってい)しているため、あらたにやってきた人々はゴミゴミしたスラムに住む。最後に、仕事があまりにも少ないため、失業者(未就業者)は貧困に陥ってゆく。
それでは、(直訳・・人々はなぜ、より少ない子どもをもとうとはしないのか。)子どもを少なくしない理由は何か。これにも、それなりの理由はある。


先進国の統計は、出生率が低下し始めると生活水準が高くなることをしめしている。しかしながら現在の発展途上国では、さまざまな理由から、適切な社会福祉や老齢年金も整備していないし、人々は預金できるほどの収入もない。その結果、老人になったとき子どもたちに生活をささえてもらうという保証を期待している。そして、子どもたちはひどく低年齢からいろいろと生活をささえる仕事をする。いいかえれば、大家族は保険というかたちなのである。
発展途上国の人々は、子どもを少なくすることを考えるより先に、将来のよりよい条件のはっきりしたしるしを見届けようとする。しかし、人口増加率を低く抑えないかぎり、彼らの条件は改善されない。こうしたおぞましいサイクルを打破するためには、ひろく家族計画の導入こそが必要であって、これは(生活)態度の基本的な変化を意味する。
世界の急速な人口増加は、発展途上国だけではなくさまざまな問題を生じている。全世界がその影響を感じている。(鉱物、木材など)原料は生産が涸渇(こかつ)し、食糧は人口増加をまかないきれない。世界の資源・・食糧、燃料、土地・・に対する発展途上国の人々の要求はますます重くなって、さらなる汚染の原因になる。アメリカで生まれる子どもは生涯に、インドで生まれる子どもの三十倍の資源を消費する。
全世界の各国が、人口爆発にたいして共同の歩調をとらないかぎり、より少なくなる土地、食糧、燃料をめぐって争いあって、未来はわれわれ全体に貧困と、悲惨と、戦争をもたらすだろう。

ゾッとする。