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午後になって、南房総に大雨洪水警報が出た。台風が八丈島付近を北北西に進んでいる。このぶんでは、千葉も雨になるだろうと思っていたが、案の定、小雨が降りはじめた。 家にくすぶっていて、本を読んだり、へたな絵を描くのも気がきかない。とりあえず、どこでもいいから散歩してこよう。

雨のなかを歩いた。タオルを肩に。
つい先日、この界隈で古風な銭湯を見つけた。ゲタ箱にドタ靴を投げ込んで、ガラス戸を開けると、番台がある。金を払う。
裸になって、お湯と水のカランを押して、からだを洗う。湯のあふれたタイルを踏みながら浴槽にむかう。入っているのは、ジジイがひとり。
ジャグジイの熱い湯に首までつかって、のんびりした気分になる。銭湯に入るのは何年ぶりだろう。
神祇釈教、恋、無常、みな入り込みの湯屋・・といった風情はない。午後の明るい光が天井からさしてくる。湯舟にゆつたりつかりながら、

沈んで乳を隠す据え風呂

そんな句を思い出した。据え風呂だから銭湯ではないのだが。こんな風俗ももう見られなくなっている。「武玉川」にある。

帰りは雨がつよくなっていた。昔の江戸ッ子なら、近くの酒屋に立ち寄って升酒。へりにチビッと塩をのせてある。舌の先で塩をねぶって、冷や酒をクイッとやるところだが、コンビニで売っているピ-ナッツや、磯部巻きのおツマミで缶ビ-ルをあおる、などという図はいただけない。オケラ街道競輪帰りそっくりになる。

雨に打たれながら歩く。ずぶ濡れに近い。からだから湯気が立っていた。