私はだいたい熟睡する。睡眠薬のかわりになにかしら読んで寝るから。
最近は、『朝鮮童謡集』(金 素雲訳)を愛読している。
メロディ-を知らないので残念だが、韓流ドラマや映画を見るようになって、こんな童謡を読んでも、ずっとよくわかるような気がする。金 素雲の序文を読むと、戦前の日本に母国の童謡を紹介しようとしたこの詩人の内面の声が聞こえてくるような気がする。
韓国ドラマ「チュオクの剣」を見て、捕盗庁(ポドチョン)という警察の活動を知ったが、こんな童謡がある。渡り鳥が空を飛んで行く。雁を見上げて、
前(さき)のが 盗人(ぬすっと)
後(あと)のが 捕盗使令(ポドサリョン)
咸鏡南道の童謡。おなじ渡り鳥を見て、
前(さき)のが 大将
後(あと)のが 盗人(ぬすっと)
中のが 蜜壺。
これは京畿の童謡。おもしろい。
とんび(鳶)は 眼が敏(さと)い
捕盗使令(ポドサリョン)は どうじゃいな
ツバメは 衣裳がよい
平壌妓生(キセング)は どうじゃいな
カラスは 黒装束
都監砲手(トガムポス)は どうじゃいな
都監砲手は猟師のことらしい。
女の子たちが遊んでいる。あとから仲間に入れてほしい子が歌う。
黒ゴマ 白ゴマ 遊んでる
荏(え)ゴマも一緒に 入れとくれ
金 素雲はいう。「なるほど、胡麻の中に胡麻が混ったからとて何の不思議はないね。君たちの巧まぬ知恵にかかっては閻魔さまだってかぶとを脱ぐよ」と。
こう書いたときの詩人の胸に何があったか。
童謡を三つ四つ読む。いろいろなことを想像する。そのうちに眠ってしまう。