404

久隅 守景(くすみ もりかげ)という画家。
江戸前期。狩野 探幽の門下。のちに狩野派を離れ、加賀に赴き、当時の農村の風物、農民の生活を描いた。「夕顔棚納涼図」は国宝という。
不精ひげの男と、上半身はだかで涼んでいる若い嫁さん、赤んぼうに近い男の子。
見ているだけでいろいろと想像が生まれてくる。
守景の晩年の作、「人見四郎出陣」。どういう武将か知らない。鎧に身を固めているが、討ち死にを覚悟しているにちがいない。そのひげづらの決意に、どこかかなしみが見られる。その賛に、

花咲かぬさくらの老木朽ちぬとも その名は苔の下に隠れじ

きっと辞世の一首だろう。
あまりうまい歌ではない。しかし、これを描いた画家の心境をうかがうことができる。
こういう思いは、いまの日本人にはわからなくなっているのだが。