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ヘミングウェイの『日はまた昇る』の題名が、旧約聖書からとられていることはよく知られている。
「世は去り、世はきたる。日はいで、日は没し・・」という『伝道の書』の一節。
ヘミングウェイが神を信じていたかどうか。あるいは、どこまで神を信じていたのか。
ヘミングウェイを読んでいたので、当然、スタインベックも全部読んだ。
『怒りの葡萄』のなかで、
「ふたりはひとりになる。彼らはその労苦によって良い報いを得られるからである。すなわち、彼らが倒れるとき、そのひとりがその友を助け起こす。しかし、ひとりであって、その倒れるとき、これを助け起こす者のいない者はわざわいである」
という、おなじ『伝道の書』の引用を見たとき、ここにヘミングウェイと、スタインベックの違いを見ることができるような気がした。
その後、私はいつもこのふたつをめぐって考えつづけてきたような気がする。