ずいぶん昔ヘミングウェイを読んでいたら、こんな言葉にぶつかった。
しかし、作家というものはますます孤独になるものだな。なすべき仕事は多いのに、時間はますます少なくなって行くのだから。
あるインタヴュ-に答えたことばだが、いまの私にもこの重みは、いくらかわかるような気がする。
去年は去年の孤独があり、今年は今年の孤独がある。
私はその孤独に耐えるしかない姿勢で、仕事をつづけてきたが、年々歳々、孤独は深まってゆく。
私は、その孤独に沈潜しなければならない、などというのではない。
ヘミングウェイのように強靱な精神力、体力に恵まれた作家でさえ、自殺しなければならなかった。私はヘミングウェイのような大作家ではないので、自分がますます孤独になってゆくことに、うろたえながら生きている。まだもう少し書きたいものはあるのだが、書けなくなっても仕方がない。もともと才能に恵まれなかったことを嘆いたところではじまらない。