マキャヴェッリの喜劇を演出したことがある。
『クリ-ツィア』五幕。訳は中田 耕治。
おかしな喜劇で、これをコメディア・デッラルテふうに演出した。
劇中に、ジェフ・ベック、グランド・ファンク、ミッシェル・ポルナレフなどをつかった。若い女優たちがときどきちぶさをポロッと見せたり。当時としては奇想天外なものになった。
マキャヴェッリといえば『君主論』の思想家。しかし、劇作家としては『マンドラゴラ』という傑作がある。マンドラゴラは曼珠沙華(まんじゅしゃげ)、クリ-ツィアは向日葵(ひまわり)。
ニコマコ いいか、計画はこういうことだ。まず、おれが寝室に忍び込む。暗闇で、静かにいそいで服を脱ぐ。さて、ピエトロのかわりに、花嫁のとなりにそっとすべり込む。
ダモ-ネ なぁるほど。で、どうする?
ニコマコ さて、彼女にぴったりくっついて。新婚初夜の花婿よろしく、彼女の乳房にふれてみる。彼女はおれの手をとって・・・・離さない。そこですかさずキスをする。あら、そんな、といっておれの顔を押しのける。ところが、おれは、彼女の上からのしかかる、そこで、彼女も観念して・・・
というお芝居。天衣無縫のいやらしさ、おおらかさ。猥褻な喜劇に見せかけながら、じつは、マキャヴェッリがイタリアの現状に冷然たる侮蔑をなげつけている。どうです、おもしろそうでしょう。
入りはよくなかったが芝居はまあまあだった。このとき、主役をやらせた女の子のひとりが、今、参議院議員になっている。もうひとり、これも主役をやらせた女の子は、劇団のゴタゴタにいや気がさして私から離れてスペイン舞踊に進んだ。
夢まぼろしのごとくなり。