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子どもの頃から、メガネをかけていた。
近眼の度は、ある年齢に達すると進まないという。ところが、私の近眼はいつまでも度が進んだ。だからド近眼であった。へんな話だが、いつ頃からか、すこしづつ昔に戻って、よく見えるようになってきた。老眼になったせいなのか。あまりメガネが必要ではなくなってきた。
本を読むスピ-ドは落ちたが、読みたい本、買ったまま読まずにいた本、一度読んでみたが、どうもよくわからない本などがいっぱいあるので、読まないわけにはいかない。
ずっと昔に読んだときは感心したのに、いま読み直してみるとそれほどに思えなかったり、昔に読んだときはあまり感心しなかったのに、読み直してみて、何も読めていなかったことに気がついたり。私の「文学講座」は、そうした「読み直し」の一歩なのである。
「ロシアに不美人はいない。ウォッカが足りないだけだ」という諺があるという。
それをパクッて(よくいえば、パラフレ-ズして)、
「日本の女たちに不美人はいない。なにしろいまの私にはメガネが必要ではなくなってきたから」
うん? シャレにもならないか。