鎌倉の東慶寺は何度か訪れたことがある。
境内に晩年の鈴木 大拙が過ごした松ケ岡文庫があるが、畏れ多いのでここには立ち寄らない。墓地には西田 幾太郎、和辻 哲郎、谷川 徹三などの墓があるが、どなたも存じあげないので失礼して、小林 秀雄の墓に詣でることにしよう。
ほかの方々の墓碑にくらべて、小林さんの墓は驚くほど小さい。しかし、そのゆかしさにこの思想家の姿が重なるようだった。
この墓から見て裏手にあたるのだが、裏山の中腹から上のあたりに、澁澤 龍彦のお墓がある。ひとつおいて磯田 光一の墓がつづいている。
澁澤 龍彦とは何度か酒を酌みかわしたことがあるが、磯田 光一とはコ-ヒ-を飲みながら話をしたことがある程度だった。それだけのことながら私にとってはありがたいことだった。
澁澤 龍彦、磯田 光一のふたりとも私にとっては忘れられない文学者なのである。