イカサマ。誰でも知っているわるいことば。インチキとおなじ。
しかし、違った用法で「いかさま」という副詞があった。如何様からきている。
謡曲の『羽衣』に・・・天人の羽衣を見つけて、「いかさま取りて帰り、家の宝になさばや」という。これはどうしても、とか、ぜひにも、という意味。これも死語。
しかし、自分がはっきり確信していういいかたの「いかさま」は、相撲名解説者だった玉ノ海のあとをついだ神風が使っていた。
「いかさま大鵬は柏戸の動きを読んでいましたね」というふうに。
おやっと思った。その当時でもめずらしいいいかただった。
もう一つ。
「いかさま腹がへってやりきれねえ。何かうまそうな料理と、熱燗で二、三本たのむよ」といった。
戦後すぐに、ある作家の短編で見つけた。
なつかしいいいかた。