伊勢に足をはこんだ芭蕉が、
宮川に芋洗う女、西行ならば歌作らむ
と詠んだ。すごい字あまりだが、さすがにいい句だと思う。
はるか後年、「大阪朝日」の水島 爾保布がこれをもじって、漫画、漫文に、
宮川に芋洗う女、弥次郎兵衛ならば何とせむ
とつけた。弥次郎兵衛は、いうまでもなく『東海道中膝栗毛』に出てくるヤジさんのこと。これを岡ッ引きが見逃すはずがない。
たちまち不敬罪ということになって、水島 爾保布はトッちめられた。
戦前の「治安維持法」がどういうものだったか。東ドイツの「シュタ-ジ」どころではなかった。
もっとも、今だってうっかりマンガも描けない時代になってきた。