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座について、両者はまるで百年の知己のようにうちとけて語りあった。
彼が、
「お困り召されたかな」
というと、相手はかるく笑って、
「なんで、わしをこんなに苦しめなさるのじゃ。これから、わしがあんたに代わって官軍を指揮するから、あんたがわしに代わって江戸城に立てこもってもらいたいな」
と答えたがすぐにまじめになって、
「でも今度、あんたがきてくださったので、わしもすっかり安心しましたよ」
といった。
江戸城明け渡しである。西郷 隆盛、勝 海舟のふたり。場所は品川の薩摩屋敷。
ほんとうかどうか、私は知らない。昭和初期、児童もので知られていた安倍 季雄が書いている。