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愛と言うのは、執着という醜いものをつけた仮りの、美しい嘘の呼び名かと、私はよく思います。

伊藤 整の作中人物がいう。
ありていにいえば、そういうことだろう。だが、かりにも美しい嘘なら、われひとともに騙されていい。たしかに執着は醜いだろうが、どうあっても執着しなければならないこともある。
「私はよく思います」というのだから、そう思わないときも、たまにはあるわけだろう。私たちにしても「そう思う」と「そう思わない」の間に揺れることがないだろうか。