安東 つとむ著『街を吹く風』(揺籃社/05.12月刊)を読む。
著者はフリー・ジャーナリスト。桶川のストーカー事件、薬害エイズ、小樽運河保存運動や、阪神大震災ではヴォランティア活動をつづけた。
ジャーナリストとしての活動に一貫して流れているものは、弱い立場の人々、しいたげられている人々に対する共感であり、その位置から、なかなか見えにくい支配や搾取にたいする果敢な反撃といっていいだろう。そして、対象に寄り添って歩いている。
チェチェン、チベット、イラク、アフガニスタン、中国などの人権や政治犯にたいするまなざしにも、それははっきり見ることができる。
色川 大吉先生のセミナーで学んだ。
第二部は、「街風通信」というコラムで、これも、街を吹き過ぎる風のようにさまざまな話題をとりあげている。
「あとがき」に、私の名をあげて、
「『きみには好奇心がない!」と常にショックを与えられ、なんとかものかきに育てていただいた作家・中田耕治先生に、感謝の言葉をおくりたい」
とあった。おいおい。わるい冗談だなあ。
好奇心のかたまりだった安東君にむかって、きみには好奇心がない! などといったことがあるだろうか。少なくともビックリ・マークのつくような、いいかたはしなかったと思う。
私がきみをものかきに育てたわけではない。きみは私といっしょに山に登ったり、街を歩いてきただけなのだ。私を見ているうちに、ひとりでにもの書きになってしまった、というのがいちばん自然ないいかたではないだろうか。
ほんとうの俳優は「役」になるのではない。「役」が向こうからやってくるのだ。