女優のアン・バンクロフトが亡くなったときの記事。
「メル・ブルックス夫人。享年、73歳。演劇学校などで学んだ後、ハリウッドで映画デビューしたが、役に恵まれず、ニューヨークのブロードウェイに移って、舞台『奇跡の人』に出演」とあった。
おやおや、可哀そうに。ハリウッドでも数々の名作に出演しているのに。
BS11の追悼番組で彼女の代表作、「奇跡の人」を見た。
アンは、世間の人が「卒業」の「ミセス・ロビンソン」ばかり称賛して、ほかの作品の演技を誰もとりあげてくれない、と不満だったらしい。世間の評判とか人気なんて、そんなものなのだ。
たまに、「役」に自分自身をぴったり重ねることに満足する女優がいる。そういう女優は、自分が「役」を愛している動機や自信を、観客に要求するようなところがある。アンはいつも自分の役に自分で満足しているようなところがあった。
私が舞台演出家だったら、『後妻のタンカレー夫人』や『ヘッダ・ガブラー』をアンにやってもらうだろう。
『奇跡の人』に出た子役のパティ・デュークは、もう少し伸びるかと思ったが、それこそ役に恵まれなかった。子役がおとなになっても成功しなかった例。シャーリー・テンプル、マーガレット・オブライエン、リンダ・ブレア。パティもその例にもれなかった。