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竹久 夢二の「宵待草」は誰でも知っている。
夢二は、明治四十年に九十九里を歩いた。その五年後、明治四十五年(1912年)に、八行の詩「宵待草」が発表された。夢二、三八歳。
ただし、この「宵待草」は平凡な作品で、詩としてはとるに足りない。
ところが、翌年(大正二年)に三行に圧縮された。

 

まてどくらせどこぬひとを
宵待草のやるせなさ

こよいは月もでぬそうな

 

これは、竹久 夢二の代表作になっている。
一行アキ。
この一行の飛躍(アンジャンプマン)は、私にさまざまなことを想像させる。

「九十九里月見草咲く浜づたい ものおもふ子はおくれがちにて」

 「旅人はかなしからずや行きづりの少女を恋ひてさまよふときく」

という、牧水ふうの短歌との関連ばかりではない。明治から大正への時代の大きな変化さえ。さらには夢二の内面の断層さえも。