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つまらない本を読んで、ああ、つまらなかったとぼやくのが私の趣味である。
いい本を読んで、ああ、よかったと思うほうが、精神衛生上、いいことはわかっている。しかし、そうそう、いい本にぶつかるはずもない。
つまらない本を読んで、つまらなかったなあ、と思ったとき、すぐに考える。
何故、つまらなかったのか。作者は、きっと自分ではいい本だと思って書いているのではないか。もし、そうだとすれば、ほんとうはいい本なのに、ひょっとして私だけがつまらないと思ったのではないか。
私の体調がよくないのかも知れない。睡眠不足。いや、食欲不振のせいか。このところ何か悩みはなかったか。ひょっとして鬱病かも。これはもう、はっきりと認知障害のあらわれではないか。
つまらない本ばかり読んでいて、思いがけずいい本に出会ったときのほうが喜びも大きい。そうでなくとも、つまらない本を読むと、つぎからつぎに考えることが出てきて、けっこう楽しい。だから、つまらない本を読むことは、どうにもやめられない悪徳の一つ。