花について。「美しい花がある。花の美しさなどというものはない」。小林 秀雄のことば。有名過ぎるほど有名なフレーズだが、しばしば誤解されている。
小林 秀雄から離れて、まったく別のことを考える。私の描く花には誰にも見ぬけないものが秘められているのだ。
いつか『ルイ・ジュヴェ』で書いたのだった。
「彼がおのれの裡に見届けているものは、マドレーヌという女、マドレーヌの“花”をすばらしい眺めとして楽しむ自分ではなかったか。」(第五部 第三章)
マドレーヌ・オズレイ。ルイ・ジュヴェの「恋人」だった女優。
私はいつも誰にも見ぬけない、秘められた“花”をこそ描いてみたいと思ってきた。