モンタンが来日したとき、フランス大使館で歓迎パーティーが催されて、なぜか私も招待されていた。
モンタンは堂々たる風格で、背が高く、ゆたかな声で、みごとなスピーチをした。短い時間、といっても十分ばかり、じつに冷静、かつ明晰に、とうとうと日本の文化を論じた。
つづいて日本を代表する有名な映画俳優ふたりが挨拶したが、空疎で無内容な挨拶だった。ひとりは、テレくさそうに、適当にモンタンに敬意を表しただけで、通訳も困ったらしく、途中でかなり省略してしまった。私は、ふたりともモンタンの映画をろくに見ていないことに気がついた。「いそしぎ」も「ギャルソン」も「Z」も。
日本の役者の頭のわるさ、社交性のなさにはほんとうにあきれたが、これほどの男性ならマリリンが恋したのも無理はないという気がした。