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映画の試写室はおもしろい場所だった。
淀川さんは暗いなかで小さなノートに鉛筆を走らせつづける。飯島さんがすわる席はきまっている。双葉さんがきているかどうか、離れていてもすぐにわかる。つまらない試写だと、植草さんのからだがだんだん傾いて最後には寝そべってしまう。
試写室でよく見かけたのは田中 小実昌、渡辺 淳。お互いに顔を見あわせてニッコリするだけ。やあ、きていますね。そういう微笑だった。映画の話もしたことがない。いまはもうふたりとも亡くなっている。
自分でも信じられないのだが、私は週刊誌で5年、新聞で10年、週に二、三本、映画批評を書いてきたのだった。