宇免という名で、ウメと読む。役場の戸籍係が旧弊な人だったのか、それとも平ガナがきらいだったのか。ウメの母がタケ。名前が気に入らなかったので、自分でアイに変えてしまった。お愛さん。働き者で、眼のきつい、気丈な女だった。私の祖母である。
その母が、婦ん。おブンさん。嘉永生まれ。人がよかった。その母は……。
江戸末期から明治にかけて、庶民の女の名前は平凡で、おかしくて、かなしい。
宇免という名で、ウメと読む。役場の戸籍係が旧弊な人だったのか、それとも平ガナがきらいだったのか。ウメの母がタケ。名前が気に入らなかったので、自分でアイに変えてしまった。お愛さん。働き者で、眼のきつい、気丈な女だった。私の祖母である。
その母が、婦ん。おブンさん。嘉永生まれ。人がよかった。その母は……。
江戸末期から明治にかけて、庶民の女の名前は平凡で、おかしくて、かなしい。